貫華齋

西遊記・金聖歎・中国古典小説

 前回まで、原本西遊記の中のどんな挿話がよく児童書西遊記に用いられているのか、その採用数と内容をご紹介してきましたが、日本における児童書西遊記の全部が全部、採用数の多い挿話を並べて成り立っている、というわけではありません。

 もちろん、ページ数の多い本では、A部分から重要な部分を採用し、さらにC部分でもコア・ストーリー(悟空・龍馬・八戒・悟浄の弟子入りとお経を得る場面を含む挿話)はもちろん、妖怪退治の挿話も幾つか、ないしはたくさん(前に述べたとおり、妖怪退治の挿話は増減が比較的やりやすいのです)採用して成り立っているものが多いです。こういう採用パターンを「全体型」としておきます。

 しかし、ページ数が少ない本(概ね100ページぐらいまでを念頭に置いています)では、原作のある部分のみ、あるいは幾つかの挿話のみを採用するパターン(以下「部分型」としておきます)の作品も一定数見られます。

 「部分型」はさらに、C部分(西天取経の旅)から「のみ」挿話を採用するC部分型と、A部分(孫悟空が五行山に封じ込められるまで)を「中心に」挿話を採用するA部分型に分類できます。A部分を「中心に」 採用する作品の中には、C部分から、コア・ストーリーのみを採用するものもよく見られるため、本稿での定義では、A部分の挿話を採用し、コア・ストーリー以外にはC部分の挿話を採用しないパターンをA部分型としておきたいと思います。

 また、A部分型には孫悟空が西天取経の旅に行くものと行かないものがあります。そこで、取経に行くものをA部分1型、行かないものをA部分2型とさらに分類しておきます。

 2012年に、それまでに調査を終えていた100ページぐらいまでの児童書西遊記から61冊を無作為抽出(というと聞こえがいいですが、実際には「手当たり次第」です)して採用パターン別に作品点数を数えてみたところ、以下の通りとなりました。

 全体型(五行山以前と妖怪退治を共に含むもの)… 34点
 部分型
  C部分型(五行山以前の話の無いもの)… 11点
  A部分型(妖怪退治の話の無いもの)
  ・A部分1型 取経に行くもの   … 9点
  ・A部分2型 取経に行かないもの … 7点

 簡単に言えば、だいたい半数あまりが全体型で、残りを部分型のC部分型・A部分1型・A部分2型で同程度に分け合っているという結果ですね。

 上の数字は、1899年から2011年までに出版された児童書西遊記を、時代を考慮せずにいっしょくたにして数えた数字ですが、どの時代においても常にこのような比率だったのでしょうか? それを知るために、次に年代別に点数をまとめてみました。年代は終戦まで(1945年以前)・戦後復興期(1946-1953年)・高度経済成長期(1954-1973年)・安定成長期(1974-1991年)・バブル崩壊後(1992-2000年)・今世紀(2001-2011年)と、社会状況によって年代を区分しています。

[表]採用パターンの分類別件数及び年代別件数
           -1945 1946-1953 1954-1973 1974-1991 1992-2000 2001-2011
全体型   0   5   7   11   3   8
C部分型   2   1   0   1   3   4
A部分1型   5   1   1   1   0   1
A部分2型   1   1   1   2   0   2
合計   8   8   9   15   6   15

 この表からは、以下のような事が読み取れるでしょう。

1.(調査した範囲内では)全体型は終戦前には見られなかったが、それ以降は継続的に半数以上を占めている。

2.A部分2型は分布が分散している。

3.A部分1型は終戦以前に多かったがその後減少し、逆にC部分型は近年増加している。

 この3点を念頭に置きながら、次回からは各採用パターンの書籍を具体的に紹介し、この変化が何を意味するのかを考えてみたいと思います。

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