貫華齋

西遊記・金聖歎・中国古典小説

コミック

2015年を振り返る【読書編】

今年もあまり更新できなかった当ブログですが、年末ということで、今年を振り返ってみたいと思います。
で、まず今日は【読書編】。新企画(笑)です。

大学時代の友人のブログによると「年間百冊読書する会」というのがあり、とにかく百冊読めば会員を自称できるのだそうです。そこで、6月から読書記録を付けてみたところ、今年は比較的本を読んでいて、読了した本が7ヶ月で70冊でした。会員を自称できるか否か(5月末までに百冊になるか否か)はまだわかりませんが、折角なので、今年読んだ本の中で良かったと思うものを、メモしておきたいと思います。

なお、私はお金も無く、本の置き場所も無いので、基本的に読む本は文庫か新書、それも電子書籍になっているものが多いです。ですから話題になった『火花』も『教団X』もまだ読めておらず、「今さら?」という本が多いかもしれない(自分では判りませんが)ことを予めお断りしておきます。

まずは、好きな作家の作品の中で、ベスト、もしくはそれに近い作品に、今年出会えたと思えたのが次の2つです。どちらもそれぞれの持ち味がよく出ていると思います。


登場人物がすっかり気に入ったのが、次の2作品。まったくタイプの異なる二人ですが、肉子ちゃんと、リトル・アリョーヒンはどちらも愛すべきキャラクターだと思います。


上手いなと思ったのが次の2作品。前者は叙述トリックに見事引っかかり、二度読みしました。後者は描写が上手く、上海は良く知りませんが、北京と台湾については、街や人の感じがよく出ているように思います。タイトルもいいですね。中国語では「お気を付けて」というのを“慢走”とか“慢慢走”とか言います。“慢”は「ゆっくり」、“走”は「歩く」ですので、直訳すると「のろのろ歩け」となるわけです。確か、後者は北京研修でご一緒した、ある先生が紹介してくださった本だったと思います。


論説部門ではこれでしょうか。タイトルに偽りなしの「超明解」。「大江健三郎や中上健次って、なんであんなに評価が高いの?」と思う人は是非。

コミック部門では、以前挙げたもの『聲の形』『四月は君の嘘』 )も勿論良いのですが、それらは私の中では去年読んだ本というイメージなので、今年だとこれかな。

やっぱりコミックには「読み始めたら止まらない」感が欲しいんですよね。これは絵柄があまり好みではなくて(そういえば『進撃の巨人』も読み始めるのは遅かったです)ずっと読んでいなかったのですが、共同研究をしているある先生にご紹介いただいて試しに読んでみたら、一気に既刊分を全て読んでしまったという、まさに読み始めたら止まらない作品。

他にも色々面白いものが有ったように思いますが、ひとまずここまで。

※ 2016.09.07 Amazonリンク訂正。内容も少し追加。


『SOSの猿』-中野先生-『SARU』

 伊坂幸太郎さんの『SOSの猿』は、孫悟空が大きな役割を果たす作品で、悟空の他にも二郎真君、蠍の妖怪、牛魔王、お釈迦様の掌の話など、『西遊記』のいろいろなキャラやエピソードが使用されています。

 この小説には、上記のエピソードの他、『西遊記』第36~40回にあたる、烏鶏国の話も使われています。が、烏鶏国の話、どちらかというとマイナーな話で、児童書における採用率は、原作で直前に位置する「金角・銀角」よりもずっと低くなっています(サイト「子どものための西遊記」で、2013年5月14日までに調査した181冊中、金角・銀角の話が92冊で取り上げられているのに対し、烏鶏国の話を取り上げている本は20冊)。だから作中で「『西遊記』の烏鶏国の巻を読んだことがないものに説明すれば、こういう話だ」云々と、あらすじを説明しなければいけなかったのでしょう。

 実際、参考文献として挙がっている児童書、渡辺仙州さん編訳の『西遊記』上・中・下(偕成社、2001年)には、烏鶏国の話は出てこないようです。ですので、伊坂さんが烏鶏国に関する部分を書いた時には、大人向けの翻訳、これも参考文献に挙がっている中野美代子先生訳の『西遊記』全十冊(岩波文庫)を参考にしたのではないかと思われます。伊坂さんはこの作品と対になるコミック『SARU』の作者、五十嵐大介さんとの対談の中で、「『西遊記』は子供向けしか知らなかった。それで岩波文庫版を買って読んだら面白くて」と、いっていますが、その「面白かった」話が烏鶏国だったのかも。

 「対になる」五十嵐大介さんのコミック『SARU』の方は、西遊記のプロットや小道具をふんだんに使っているというよりも、孫悟空という存在や、その術である「身外身」(毛を吹いて分身する術)が持つ、社会的・思想的な意味を、核の一つ(もう一つの核は「悪魔祓い」)にしているような作品でした。「社会的・思想的な意味」の内容に関しては、上記の対談に以下のような箇所があり、こちらも中野先生(ただしこちらは翻訳よりも解説書の方)の影響を受けているようです。

NHK教育の「人間大学」という番組で、中国文学者で作家の中野美代子さんが『西遊記』をテーマに講義をやったんですね。そのテキスト『孫悟空との対話』(日本放送出版協会)を読んだら、『西遊記』の成立の過程とか、陰陽道による読み解き方とか、キャラクターの関係性とかがすごく面白かった。

 なお、この『SOSの猿』と『SARU』という二つの作品、「対となる」というだけあって、片方だけ読んだだけだと、多分「なんのこっちゃ」となりそうな箇所がいろいろあります。やはり両方読んだ方がずっと解りやすいし、楽しめるような仕掛けになっているようです。

※ 2016.09.06 Amazonリンク訂正。


ebook版『水滸伝』(李志清・夏秋のぞみ)

李志清・夏秋のぞみのコミック『水滸伝』がeBookJapanででたようです。
・ eBookJapan 『水滸伝』 全16巻 [立ち読み版アリ!]
一冊¥315で、「安っ!」と思ったら、ebook2冊で文庫版一冊分の内容でしたか。
だったら同じぐらいですね。
↓MF文庫版

※ 2016.09.06 Amazonリンク訂正。


コミック版金瓶梅


 当サイトでもいろんな意味で応援中の、わたなべまさこ 『 金瓶梅 』 に新刊が出ました(12巻)。奥付によると11巻の刊行が、2003年12月となっているので、3年半ぶりということになります。

と、思っていたら、今度は eBookJapan から、竹崎真美、まんがグリム童話 『 金瓶梅 』 の電子書籍版刊行のお知らせが。『 金瓶梅 』 なのに何故 「まんがグリム童話」? と、不思議に思ったのですが、そういう名前の雑誌があって、そこに掲載されていた ( いる? ) ということのようです。

それにしても、タイミングが重なったので、コミック版 『 金瓶梅 』 流行の兆しか?と、一瞬思ってしまったのですが、それはないか。

なお、電子書籍版のコミックには 、『 がきデカ 』の作者、山上たつひこの 『 金瓶梅 』 もあります。(追記:なくなったようです)

※ 2016.09.06 Amazonリンク訂正。その他のリンク(リンク切れ)を削除。


マンガの中の中国語(2)

昨日の続き。
さて、昨日書いた中国語の「独創的な間違い」を見られるマンガというのはわた○べまさこ氏の『金瓶梅』で、現在11巻まででております。中国古典小説の『金瓶梅』を元にしたまんがですね。
最初のころ(6巻ぐらいまで)はあまり無いのですが、7巻の終わりぐらいから各回の最後に読者に向けて「謝々、大謝々」とお礼の言葉が入るようになります。

大謝々」?

まあいいです。8巻以降は台詞の中にもこの「謝々、大謝々」がでてきたり、次第に「はい」を「対」にしたり、その他「没有」「不要吵」「你好」など、台詞のちょっとしたところに中国語が使われるようになってきます。でもこういう使い方ならあんまり間違いは起こらないような気もしますよね。ではどんな間違い方をしているのでしょうか。

1.独創的な発音
例えば8巻の台詞の中の「謝々」には「しゃあしゃあ」とふりがながふってあったりします。その他「对不起」が「ドウフイチイ」だったり「真」が「ズン」だったり。でも最後のは南方系のなまりに近いとも言えますね。

2.簡体字を日本語にあてる時のまちがい。
前回の「请」を「清」にしてしまうようなパターンですね。
このマンガでは

「我不明白」
「回見」

などがでてきます。前者は「太」の間違いでしょうか。後者は「头(頭)」をよく似た(?)字で置き換えてしまってるんでしょうね。
「请」→「清」がありがちなのに比べるとこれらの置き換えはかなり独創的です。

3.独創的な語句の切り方
あまり長い文章は無いので切り方も何もないようなものなのですが、こう書いているところがあります。

对!!
不起!!

独創的です。

4.造字。
文章で説明するのが非常に難しいので以下の画像をご覧ください。

b0003153_23392167

「白了」というのが一文字なんですねえ。読み方は「パイラ」。素晴らしい。

以上です。はやく12巻でないかなあ~。

※ 2016.09.05 Amazonリンク、画像ファイルの移転。


マンガの中の中国語(1)


 この間テレビで「ピンポン」という映画をちらっと見ました。

 面白そうだったのですが、映画をまるまる一本観るようなまとまった時間はなかなかないので、原作のマンガを入手し、例によって空き時間を利用して読んでみました。実はこのマンガ、『ビッグコミックスピリッツ』に連載されていたもので、連載開始当時私も読んでいましたし、注目もしていたのですが、連載中に台湾に留学してしまったので、途中までしか読んでいなかったのです。

 で、読みました。面白かった。

 作者の画力はすでに定評のあるところですし、ストーリーは私のツボである友情物。台詞もいちいちクールで格好いい。

...のですが、その格好いい台詞の一つで「えっ?」となってしまいました。

 第4巻。ある中国からの助っ人留学生が、トーナメント戦で主人公(の一人)と試合し、いよいよ負かされそうになったとき、主人公に言います。

「風間によろしく」。

 「風間」というのは彼がトーナメントを昇っていって対戦する予定だった優勝候補の選手です。彼はついにその試合で敗退することを覚悟し、主人公にこう言った訳です。この台詞だけ抜き出すとどうということはありませんが、マンガの流れの中ではなかなかイイ台詞なんですよ。

 が、この留学生、この台詞を中国語でいうんですね。

清問風間同志好!」と。

 うーむ。外国人(共産革命の同志ではない人間)に「同志」っていうかなあ(と、いうか中国人同士でも今時あまり使わないのでは)?とかっていうのもあるのですが、一番の問題はやはり「清」。

 言うまでもなく中国語の「请」は日本語の漢字だと「請」ですね。まあ、ありがちな間違いではあるのですが(大学で中国語の授業をとっている一年生とか)、人気漫画でやると影響を受けちゃう人がでてきたりするので困りますよね。とはいっても「中国語講座」なるサイトでも同じようなミスをやっているので、仕方ないのかもしれません。

 なお、この字、第5巻にもでてくるのですが、そこでは簡体字で「请」となっています。が、その次の台詞で「哪儿个都可以」とか言っていたりして油断ができません。ちなみに身近にいるネイティブは「北方人にはやたらと“r”(r化音)を入れる人がいるので、それをそのまま文字にしちゃったんじゃない?」と推測してました。

 外国語の台詞を原文で書くとカッコイイですが、いろいろと難しいようですね。

と、いうようなことを考えていたらある漫画のことを思い出しました。
ここで書いたようなのは、まあ「気持ちはわかる」ようなものなのですが、そちらはなかなか独創的な中国語の使い方でした。こんどはそれをご紹介したいと思います。
(追記:翌日の日記でご紹介しました。→ こちら )

 あ、そうそう、映画版「ピンポン」の中国語、普通話じゃなかったようですが誰か何語か判る方はいらっしゃいますか?広東語っぽかったのですが、設定では「元上海チーム」ということだったと思うので上海語かもしれません。私はどちらも解らないので。

※ 2016.98.05 Amazonリンク、リンクの訂正。


PLUTO

「PLUTO」。
 この人の作品は完結した「MONSTER」もそうでしたし、連載中の「20世紀少年」でもそうなのですが、「どうなるんだろ?」と期待させるのが上手ですねえ。

 さて、この「PLUTO」には通常版(¥550)豪華版(¥1800)があり、広告等によると豪華版には次の特典があるそうです。

・豪華特別付録として、原作の鉄腕アトム「地上最大のロボット」を完全収録!!
・雑誌掲載時と同じB5判の特大サイズ!!
・雑誌掲載時のカラーをすべて再現!!
・メタリックな美麗装丁!!
・浦沢直樹×手塚眞 対談を完全収録!!

 私は通常版の方を購入したのですが、上の特典のうち原作の「地上最大のロボット」には心惹かれます。うーん。でも、これだけの為に豪華版を買い直すのももったいないし、「鉄腕アトム」を買いますかねえ。ebookという手もありますね。

 amaz○nでは「あわせて買いたい 『PLUTO 1 (1)』と『PLUTO 1 (1) 【豪華版】 ビッグコミックススペシャル』、どちらもおすすめ!」って書いてありますが、豪華版買っておいて通常版もあわせて買うって、かなりマニアックな買い方なのではないでしょうか。いるのかなあ。そういう人。

※ 2016.09.05 Amazonリンクと文章のレイアウトを訂正。