2018年を振り返る【読書編】

今年はとにかく本の読めない年で、おそらく20冊程度しか読んでいないと思われます。
その中で、今年の読書メモを調べてみると、「良かった」「面白かった」と書いてあるものが

など。「泣けた」と書いてあるものが、

などでした。「知ってた」と言われそうなものばかりですね。

小説以外では、今年、久しぶりに中国古典小説研究会に出るにあたって、未読だった

を読んでみたのですが、自分が参加する以前の古典小説研究会についての話が興味深かった上に、孫遜氏の「近三十年の中国古典小説研究における視野の広がりについて」のように、中国における古典小説研究の流れを日本語でまとめた文章が、とても勉強になりました。

コミックは、昨年の『弱虫ペダル』のように、次男と一緒に読みはじめたものが多く、その中では、

などが面白かったです。世間の評価も高いやつですね。

一人で読んだもので、今年新たに読んだものの中で良かったのは、

といったところでしょうか。

来年はもっといろいろ読めるといいなと思います。


2018年を振り返る【研究・教育編】

「振り返る」シリーズ【研究・教育編】6回目です。
(これまでの記事:2013年 / 2014年 / 2015年 / 2016年 / 2017年

教育面ではあまり例年と変化無く、粛々と授業をこなした感じです。

研究面では、久しぶりに中国社会文化学会と中国古典小説研究会に出席し、ご無沙汰していた方々や、お名前だけ存じ上げていた方々にお目にかかる機会ができました。日本中国学会には昨年も出席しましたが、今年は東京開催だったせいか、やはり懐かしい方々にお目にかかることができました。また、ここのところ翻訳研究の方面にばかり目を向けていたので、久しぶりに本流の中国文学研究の発表を聴いて、その進歩と面白さに触れられたのも収穫でした。

執筆したものとしては、『赤い鳥事典』の「伊藤貴麿」の項目があります。おそらく、「西遊記翻訳史における伊藤貴麿の位置」(国際文化研究21、2015年)があったためだと思いますが、思いがけない依頼でした。伊藤貴麿に関しては、本サイトでも関連資料として翻訳をいくつか掲載しましたし、2019年には数本の原稿を書く予定もあります。

最後に本サイトについてですが、「台湾の児童書西遊記」を同じサーバー内に別サイトとして立ち上げました。その一方で、メディアマーカーが1/20にサービスを中止することが発表されました。「子どものための西遊記」はこのサービスを利用させていただいていますので、2019年はこのデータの引っ越しをはじめ、データの整理をいろいろとしていかなくてはならない年になりそうです。

引き続き、よろしくお願いいたします。


伊藤貴麿関連資料(5)「菊姫物語」

伊藤貴麿関連資料の5回目は、今回も翻訳で、講談社の絵本177『菊姫物語』(大日本雄弁会講談社、1957年)から「菊姫物語」です。絵本なので本当は絵があった方がいいのですが、絵(石井健之)は著作権が残っていますので、文のみ掲載します。
原作は『聊斎志異』の「黄英」ですが、特に途中からは、かなり話が違いますので、原作と読み比べてみるのも良いでしょう。この話の原文どおりの翻訳は、岩波文庫の『聊斎志異』下(立間祥介編訳)に収められています(p.377)。
なお、伊藤貴麿はこの本の解説で、『聊齋』について

この本は、恐ろしい話ばかりにみちていると思っている人もいますが、なかなか純情な妖精の話も多く、この「黄英」ほか、「竹青」「花姑子」など、蒲松齢の筆になる妖精類には、暖かい血がかよっていて、そこが同類の中国小説中でも特にすぐれた点であります

と、述べています。

菊姫物語     伊藤貴麿

p.2
ちゅうごくの じゅんてんと いう ところに、ひとりの おじいさんが すんで いました。おじいさんは、かわいい ひとり むすめの すいらんを なくして、たいそう かなしんで いました。
おじいさんは、まえから、きくを つくるのが たいへん じょうずでしたから、あるひ、ふと きくを つくって こころを なぐさめようと おもいたちました。そこで、めずらしい たねを かいに、はるばる ナンキンへ でかけました。
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伊藤貴麿関連資料(4)「畫皮」

前回に続いて、雑誌『新小説』第27巻8号に掲載された「聊齋妖話」から「畫皮」です。
「聊齋妖話」には、前回の「胡四姐」と、この話が収められています。今回の方がちょっとエグいかも。また、現在の基準からすると不適切な表現も見られますが、あらかじめご了承ください。

聊齋妖話     伊藤貴麿

畫皮

 太原の王生と云ふ者が、未明に表に出た所が、一人の娘に遇つた。包みを抱へてたつた一人で急ぎ乍ら、甚步きにくさうにして居る。生は急ぎ走つて追い着いて見ると、十六ばかりの嬌娜姿である。心が切りに動いたので聲をかけて見た。
「姐さんはどうしてこんな夜明に、獨りで行きなさるんだい。」
すると女は云つた。 “伊藤貴麿関連資料(4)「畫皮」” の続きを読む


伊藤貴麿関連資料(3)「胡四姐」

伊藤貴麿関連資料の3回目。今回は雑誌『新小説』第27巻8号に掲載された「聊齋妖話」から「胡四姐」です。
「聊齋妖話」は、その表題のとおり、『聊齋志異』を訳したもので、この話と「畫皮」が訳されています。今回はそのうち、「胡四姐」の部分のみを掲載しました(「畫皮」は次回)。
なお、踊り字(繰り返し記号)は通常表記にし、Unicodeに無い異体字は正字を使用しましたが、それ以外は原文どおりです。

聊齋妖話     伊藤貴麿

胡四姐

 泰山の尙生と云ふ靑年が、獨り靜かに書齋に籠つて居た。恰度頃は秋の夜で、銀河は高く澄み、明月は耿々として天に懸つて居たので、彼は花蔭を俳徊して、切りに空想を恣にして居た。と忽然として一人の女が垣を踰えて來て、
「秀才《あなた》は何をそんなに考へて被居るの。」
 と云つて、につこりした。彼がよく視ると、其の姿の美しいこと、まるで仙女のやうだつたので、非常に喜び、書齋に連れ込んで懇ろになつて了つた。 “伊藤貴麿関連資料(3)「胡四姐」” の続きを読む