2016年を振り返る【読書編】

昨年に引き続き、今年も「振り返る」の読書編を。昨年は100冊読めるかどうか判らないと書いていましたが、今年(2016年)はちゃんとメモをつけておいたので、百数冊程度読んだことが判っています。

相変わらず、文庫になり、かつ電子書籍にもなっているものばかり読んでいたのですが、その中でベストをあげるとしたら、これではないかと思います。


同じ作者の『桐島、部活やめるってよ』で高校生の心象風景を描いたような感じで就活生の心象風景を描くのかと思いきや、(以下ネタバレ)いきなり主人公が突き落とされる展開なのですが、主人公に感情移入していると読者まで巻き込まれるというか、とばっちりで(?)罵倒されるというのがなかなか衝撃的でした。騙されたり、主人公の悲惨な境遇に心炒めるという読書経験はよくあるのですが、この「巻き込まれる」感覚は新鮮でした。映画はまだ見ていないのですが、そのうち見てみたいと思います。

その他、小説では、辻村深月『凍りのくじら』、恩田陸『チョコレートコスモス』、朝井まかて『恋歌』、綿矢りさ『勝手にふるえてろ』、伊坂幸太郎『ガソリン生活』などが面白かったと記憶しています。『ガソリン生活』はこの作者にしては驚きの展開ではなかったのですが(なんども驚かされているので、どうしてもハードルが上がってしまいます)、登場人物(というか登場車)のセリフが絶妙でした。

論説では、Kindle Unlimited の時に書いたもの以外では、加藤徹『漢文の素養~誰が日本文化をつくったのか?~』、三上延・倉田英之『読書狂の冒険は終わらない!』、三田誠広『日本仏教は謎だらけ』、齋藤孝『誰も教えてくれない人を動かす文章術』などが、勉強になったり楽しかったりしました。

マンガ部門では、これをベストにしたいと思います。


児童書専門の私立図書館の司書が、本を紹介することでいろんな人達の悩みを解決に導くという、ある意味「美味しんぼ」的な話(いわゆる蘊蓄もの)なのですが、私がちょうど児童書に興味があるのと、「美味しんぼ」よりも話がしっかりしているので楽しめました。

もう一つ挙げたいのが、これです。


仙台x音楽x石塚真一で外れるわけがないですね。

その他、ギャグマンガでは、これを推したいです。


ゲテモノを食べたい、食べさせたい高校生と、それに巻き込まれる先生の話なのですが、とにかくボケもツッコミもツボです。

その他、Kindle Unlimited の時に挙げたバーナード嬢曰く。も、やはり面白いです。私も楽して読書家ぶりたい。

以上、今年私が楽しませてもらった本たちでした。
気になったものがありましたら、是非読んでみてください。


Kindle Unlimited

Amazonの読み放題サービス、Kindle Unlimitedに登録して2ヶ月になりました。
そこで、ちょっとした感想など。

まず、「書籍購入代が安くなるのでは?」という期待を少し持っていたのですが、そうはなりませんでした。
読みたい本がkindle本にはなっていても読み放題の中に入っていないことも多く、結局買ってしまうので。

それでも登録したまま続けているのは、買おうかどうしようか少し迷うような本を「ハズレでもいいや!」と気軽に読めるのが、なかなか良いからです。例えば、啓発本は普段あまり買わないのですが、Kindle Unlimitedでは時々読んでいます。もちろん中には「アタリ」もありました。
有名なものだと思いますが、次に挙げるような本は個人的には面白かったです。
ただし、片づくようになったり、プレゼンテーション(授業)が上手くなったり、夢がかなったりしたかというと、それはまた別の話です。
あ、あと最後の『夢をかなえるゾウ』は、現在(2016.11.14)読み放題の対象じゃなくなっているみたいですね。



マンガはそれほど読んでいませんが、これはツボでした。多分そのうち買うでしょう。

それから、ちょうど夏に台湾からの来客があり「仙台の事も知っておかないと」という気分になっていたので、ガイドブックなんかも読みました。これが良かったと思います。

あとは、雑誌ですね。物欲を刺激するこの雑誌が気に入っています。バックナンバーが気軽に読めるのも、電子書籍+読み放題のいいところです。

と、いうわけで、このKindle Unlimited、「もう読むものが無いぞ!」という状況になるまでは、続けることになると思います。


2015年を振り返る【読書編】

今年もあまり更新できなかった当ブログですが、年末ということで、今年を振り返ってみたいと思います。
で、まず今日は【読書編】。新企画(笑)です。

大学時代の友人のブログによると「年間百冊読書する会」というのがあり、とにかく百冊読めば会員を自称できるのだそうです。そこで、6月から読書記録を付けてみたところ、今年は比較的本を読んでいて、読了した本が7ヶ月で70冊でした。会員を自称できるか否か(5月末までに百冊になるか否か)はまだわかりませんが、折角なので、今年読んだ本の中で良かったと思うものを、メモしておきたいと思います。

なお、私はお金も無く、本の置き場所も無いので、基本的に読む本は文庫か新書、それも電子書籍になっているものが多いです。ですから話題になった『火花』も『教団X』もまだ読めておらず、「今さら?」という本が多いかもしれない(自分では判りませんが)ことを予めお断りしておきます。

まずは、好きな作家の作品の中で、ベスト、もしくはそれに近い作品に、今年出会えたと思えたのが次の2つです。どちらもそれぞれの持ち味がよく出ていると思います。


登場人物がすっかり気に入ったのが、次の2作品。まったくタイプの異なる二人ですが、肉子ちゃんと、リトル・アリョーヒンはどちらも愛すべきキャラクターだと思います。


上手いなと思ったのが次の2作品。前者は叙述トリックに見事引っかかり、二度読みしました。後者は描写が上手く、上海は良く知りませんが、北京と台湾については、街や人の感じがよく出ているように思います。タイトルもいいですね。中国語では「お気を付けて」というのを“慢走”とか“慢慢走”とか言います。“慢”は「ゆっくり」、“走”は「歩く」ですので、直訳すると「のろのろ歩け」となるわけです。確か、後者は北京研修でご一緒した、ある先生が紹介してくださった本だったと思います。


論説部門ではこれでしょうか。タイトルに偽りなしの「超明解」。「大江健三郎や中上健次って、なんであんなに評価が高いの?」と思う人は是非。

コミック部門では、以前挙げたもの『聲の形』『四月は君の嘘』 )も勿論良いのですが、それらは私の中では去年読んだ本というイメージなので、今年だとこれかな。

やっぱりコミックには「読み始めたら止まらない」感が欲しいんですよね。これは絵柄があまり好みではなくて(そういえば『進撃の巨人』も読み始めるのは遅かったです)ずっと読んでいなかったのですが、共同研究をしているある先生にご紹介いただいて試しに読んでみたら、一気に既刊分を全て読んでしまったという、まさに読み始めたら止まらない作品。

他にも色々面白いものが有ったように思いますが、ひとまずここまで。

※ 2016.09.07 Amazonリンク訂正。内容も少し追加。


最近読んだ本

 有川浩の 『 キャロリング 』 を読みました。面白かった! 私の中の有川浩作品ランキング ( 5、6冊しか読んでいませんが ) では、これまでベストだった 『 県庁おもてなし課 』 を越えたのではないかと。シラフの時にもう一度読んでみたいです。

 実は最近 「 当たり 」 が多いような気がします。先日読んだピエール ルメートル 『 その女アレックス 』 にも驚かされましたし、映画 『 KANO 』 も、完成度という点では...でしたが、かなり泣けました。

 漫画でも、大今良時 『 聲の形 』 とか新川直司 『 四月は君の嘘 』 等は、最近ようやく読んだのですが、どちらも良かったです。


 もしかすると、年をとってきて涙腺とかいろんなところが緩んだせいで、以前より評価が甘くなってきているのかもしれませんが、それはそれで幸せ。

※ 2016.09.06 Amazonリンク訂正。


『SOSの猿』-中野先生-『SARU』

 伊坂幸太郎さんの『SOSの猿』は、孫悟空が大きな役割を果たす作品で、悟空の他にも二郎真君、蠍の妖怪、牛魔王、お釈迦様の掌の話など、『西遊記』のいろいろなキャラやエピソードが使用されています。

 この小説には、上記のエピソードの他、『西遊記』第36~40回にあたる、烏鶏国の話も使われています。が、烏鶏国の話、どちらかというとマイナーな話で、児童書における採用率は、原作で直前に位置する「金角・銀角」よりもずっと低くなっています(サイト「子どものための西遊記」で、2013年5月14日までに調査した181冊中、金角・銀角の話が92冊で取り上げられているのに対し、烏鶏国の話を取り上げている本は20冊)。だから作中で「『西遊記』の烏鶏国の巻を読んだことがないものに説明すれば、こういう話だ」云々と、あらすじを説明しなければいけなかったのでしょう。

 実際、参考文献として挙がっている児童書、渡辺仙州さん編訳の『西遊記』上・中・下(偕成社、2001年)には、烏鶏国の話は出てこないようです。ですので、伊坂さんが烏鶏国に関する部分を書いた時には、大人向けの翻訳、これも参考文献に挙がっている中野美代子先生訳の『西遊記』全十冊(岩波文庫)を参考にしたのではないかと思われます。伊坂さんはこの作品と対になるコミック『SARU』の作者、五十嵐大介さんとの対談の中で、「『西遊記』は子供向けしか知らなかった。それで岩波文庫版を買って読んだら面白くて」と、いっていますが、その「面白かった」話が烏鶏国だったのかも。

 「対になる」五十嵐大介さんのコミック『SARU』の方は、西遊記のプロットや小道具をふんだんに使っているというよりも、孫悟空という存在や、その術である「身外身」(毛を吹いて分身する術)が持つ、社会的・思想的な意味を、核の一つ(もう一つの核は「悪魔祓い」)にしているような作品でした。「社会的・思想的な意味」の内容に関しては、上記の対談に以下のような箇所があり、こちらも中野先生(ただしこちらは翻訳よりも解説書の方)の影響を受けているようです。

NHK教育の「人間大学」という番組で、中国文学者で作家の中野美代子さんが『西遊記』をテーマに講義をやったんですね。そのテキスト『孫悟空との対話』(日本放送出版協会)を読んだら、『西遊記』の成立の過程とか、陰陽道による読み解き方とか、キャラクターの関係性とかがすごく面白かった。

 なお、この『SOSの猿』と『SARU』という二つの作品、「対となる」というだけあって、片方だけ読んだだけだと、多分「なんのこっちゃ」となりそうな箇所がいろいろあります。やはり両方読んだ方がずっと解りやすいし、楽しめるような仕掛けになっているようです。

※ 2016.09.06 Amazonリンク訂正。