今回の「金陵乙」で「緑蔭雑筆」(『新小説』28巻8号、大正12年)に収められた作品は終了です。狐の力を悪用しようとした男の話。『聊斎志異』巻九に収められています。
綠蔭雜筆 伊藤貴麿
金陵乙
金陵に酒賣の乙と云ふ者があつた。いつも酒を讓す時、水をくんで其の中に藥を入れると、直ぐ良い酒が出來て、二三杯飮むと泥のやうに醉ふので、酒造りの名人の名を取り、巨萬の富を造つた。
彼が或る朝早く起きて見ると、一匹の狐が酒槽の側に醉ひ潰れて居たので、四つ脚を縛つて、方に刀を取らうとして居る時狐は眼を醒して、哀願して云つた。
「どうか赦して下さい。どんな御用でも致します。」
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