2020年を振り返る

2020年はコロナの年でした。私が受けた影響としては、授業が遠隔になったことが一番大きいでしょうか。これについては、前期の終わりに「遠隔授業の1日」に書きましたが、起きている時間の大部分を、授業資料の作成か添削に費やす毎日になりました。

後期からは4つの大学のうち、2つの大学、コマ数で言うと1/3弱の授業が対面に切り替わったので、前期よりは少し状況が改善しました。特に、週に1回とはいえ通勤のためにしっかり歩く時間ができた事は、健康面においては良かったと思います。

しかし、対面授業を行った1つの大学は、12月初めに感染者が出て1度遠隔授業に変更され、もう一つの大学は12月の授業が終わった翌々日にクラスターが発生し、1月の授業が遠隔になることが決まりました。

後者の大学でクラスターの発生が分かったのが12/24。文部科学省が12/23に「対面授業が50%以下の大学リスト」を発表した翌日だというのがなんとも皮肉ですが、それはともかく、感染された方々が無事に回復し、授業に戻って来られることを願っております。

対面授業先でクラスターが発生した以上、私自身も絶対感染していないとは言えないのですが、今のところ濃厚接触者に該当する等の連絡はなく、ひたすら冬休み明けの準備に追われていて(というかそもそも冬休みが1週間しかない)、今日(大晦日)も明日(元日)も普通に仕事をする年末年始となりました。

研究面では、昨年末(ということになっていますが、実際には今年刊行。でも書いたのは去年)、自分の専門領域では初の共著論文を出しましたが、その後は授業準備・添削に追われる生活で、春休みに日本語訳西遊記の調査と整理をして以降は、まったく研究が進まない1年でした。

今年度から、東北大学の非常勤講師をしている部局が研究面のサポート(科研費の窓口としての業務等)を行わないことになり、哀れに思った国際文化研究科が、私を「GSICSフェロー」とし、研究面のサポートをしてくださることになったのですが、今年は研究が進められず、申し訳ない限りです。

また、今年度から、U-PARL(東京大学附属図書館アジア研究図書館上廣倫理財団寄付研究部門)協働型アジア研究プロジェクトの、荒木達雄氏を代表とする「東京大学所蔵水滸伝諸版本に関する研究」のグループに参加させていただいています。こちらもコロナの影響で会合が少なく、それもネットによるもののみでしたが、水滸伝関係でご活躍中の先生方のお話を聞かせていただいて非常に勉強になり、楽しかったです。プロジェクトの期間はもう1年ありますので、次回も楽しみです。

最後に、これも例年振り返っている読書記録ですが、そもそも読書があまりできていないため、今年は良かった本を1冊だけ挙げておきます。

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話題になった本なので、既に読まれた方が多いかとは思いますが、大学で働く人で、まだ読まれていない人は一読されることをお勧めします。色々と腑に落ちることがあるかと思います。

長くなりましたが、皆様、何卒お体に気をつけて、よいお年をお迎えください。
来年は活発に活動できる年になることを祈りつつ。

井上浩一 2020年大晦日


2019年を振り返る

7年目の「振り返る」です。
今年は研究・教育・読書、まとめて一本で。
過去の記事を含む、「振り返るシリーズ」カテゴリーはこちら

教育面から書きますと、授業は週14コマ。中国語以外の授業が無くなってしまったのが残念でしたが、その分少し余裕をもって準備等ができているように思います。

研究では『中国児童文学』第26号に「伊藤貴麿の「中国もの」児童向け読み物とその題材 ― 附 伊藤貴麿著作目録」を発表しました。タイトルで「附」とした目録が、実質的にはメインといえる原稿で、論文ではないため業績としてはそれほど重要なものにはならないかもしれませんが、調査に時間と手間がかかっていることもあり、自分としてはこれが出せたことは、割と大きな区切りとなりました。また、伊藤貴麿については来年早々に共著論文が出る予定です(校正済み)。

このサイト関連では、「子どものための西遊記」閉鎖に伴い、新サイト「日本の児童書西遊記」を開始したことが大きな出来事でしたが、そう考えると、今年は「目録作成の年」だったと言えそうです。

次に読書編です。今年も(昨年よりはマシですが)あまり本を読めておらず、(文庫版『1Q84』を6冊と数えても)読了したのは40冊程度でした(ここでは文庫・新書やその電子書籍等、手軽に入手できるもので、最初から最後まで通して読んだもののの数です)。

その中で「これは凄い」と思ったのは、村田沙耶香『コンビニ人間』でした。コンビニの仕事のようなマニュアルが無いと「普通の」生き方や生活のしかたやがわからず、人間関係においては、空気を読めず、それを自覚はするものの、空気を読む必要性を理解していない主人公が、社会・世間と向き合うとどうなるかという思考実験のような面をもつ小説ですが、それがよく考えられ、よく書かれていると思いました。

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その他では、辻村深月『島はぼくらと』などが良かったです。

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小説以外では、安田峰俊『さいはての中国』が面白かったです。来年は同じ作者の他のものも、いろいろ読んでみようと思います。

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また、箱崎みどり『愛と欲望の三国志』も、日本で読まれた三国志物語を幅広く押さえていて良かったです。『西遊記』も『三国志』物語と同じような受容のされ方をする場合が多いので、『西遊記』の受容史を考える際にも、これを照らし合わせながら確認してみると、自分がまだ見落としているところが見つかるかもしれないと思いました。

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なお、この本を読む前に、この本には「西遊記とは違って、三国志が戦時中にブームを呼び起こしたのは何故か」が書かれているという評価をネットで見てしまい、「筆者は戦時中の西遊記ブームを知らないのか?」という疑念を持ったまま読み始めたのですが、そんな事は書かれていなくて安心しました(中国理解における『三国志』の優位な点については、少し書かれています)。ネットの情報に振り回されるのは良くないですね。

以上、ざっくりと2019年を振り返ってみました。
来年もよろしくお願いいたします。


2018年を振り返る【読書編】

今年はとにかく本の読めない年で、おそらく20冊程度しか読んでいないと思われます。
その中で、今年の読書メモを調べてみると、「良かった」「面白かった」と書いてあるものが以下の3点などでした。
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そして「泣けた」と書いてあるものが、『空飛ぶ広報室』などでした。「知ってた」と言われそうなものばかりですね。

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小説以外では、今年、久しぶりに中国古典小説研究会に出るにあたって、未読だった『中国古典小説研究の未来』を読んでみたのですが、自分が参加する以前の古典小説研究会についての話が興味深かった上に、孫遜氏の「近三十年の中国古典小説研究における視野の広がりについて」のように、中国における古典小説研究の流れを日本語でまとめた文章が、とても勉強になりました。

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コミックは、昨年の『弱虫ペダル』のように、次男と一緒に読みはじめたものが多く、その中では、この2つが面白かったです。世間の評価も高いやつですね。
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一人で読んだもので、今年新たに読んだものの中で良かったのは、以下の2点でしょうか。
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来年はもっといろいろ読めるといいなと思います。


2018年を振り返る【研究・教育編】

「振り返る」シリーズ【研究・教育編】6回目です。
(これまでの記事:2013年 / 2014年 / 2015年 / 2016年 / 2017年

教育面ではあまり例年と変化無く、粛々と授業をこなした感じです。

研究面では、久しぶりに中国社会文化学会と中国古典小説研究会に出席し、ご無沙汰していた方々や、お名前だけ存じ上げていた方々にお目にかかる機会ができました。日本中国学会には昨年も出席しましたが、今年は東京開催だったせいか、やはり懐かしい方々にお目にかかることができました。また、ここのところ翻訳研究の方面にばかり目を向けていたので、久しぶりに本流の中国文学研究の発表を聴いて、その進歩と面白さに触れられたのも収穫でした。
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最後に本サイトについてですが、「台湾の児童書西遊記」を同じサーバー内に別サイトとして立ち上げました。その一方で、メディアマーカーが1/20にサービスを中止することが発表されました。「子どものための西遊記」はこのサービスを利用させていただいていますので、2019年はこのデータの引っ越しをはじめ、データの整理をいろいろとしていかなくてはならない年になりそうです。

引き続き、よろしくお願いいたします。


2017年を振り返る【研究・教育編】

「振り返る」シリーズ【研究・教育編】、5回目になりました。
(これまでの記事:2013年 / 2014年 / 2015年 / 2016年

さて、2017年は研究面では、これまでに書いた原稿がいろいろな形になった一年でした。

まず論文は、「近現代日本の児童書における西遊記受容-「河童の沙悟浄」から見た-」(『中国児童文学』第24号、2016.12.25、pp.29-51)。実際に刊行されたのは今年に入ってからです。

そして、翻訳。浄慧法師の『中国仏教と生活禅』(山喜房佛書林、2017.02.23)が刊行されました。私は第3章と第4章の1~4を担当しました。
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それ以外に私の文章が掲載されたものとしては、『中国文化事典』(丸善出版、2017.04)があります。私が書いたのは「金聖歎の文芸批評」の項目です。
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上記の原稿を書いたのはほとんど昨年以前だったと思いますので、今年は比較的楽でした。ただ、今年楽した分、来年はちょっと大変です。一応某事典の項目を書いた原稿を出してありますので、それは来年形になると思いますが、肝心の西遊記受容研究は、口頭発表した内容が、論文が執筆できる段階まで今年中に進まなかったので、来年には投稿までいけるようにしなければなりません。方向性は決まっていますので、時間や予算と相談しながら着実に進めたいと思います。

本サイトでは、「僕たちが読んだ西遊記」に「キャラクターの変遷 ―― 日本で生まれた「河童の沙悟浄」を追う」を掲載できたのは良かったのですが、去年の「振り返る」で宣言していた「作家でたどる児童書西遊記」部分の開始は果たせなかったので、来年こそ開始したいと思います。

教育面では昨年から担当させていただいる中国小説史の授業のテキスト(配布プリント)を大幅改訂できたのが収穫でした。もう1、2年、授業をしながら修正を加え、書籍の形にできればいいなと考えています。

皆様にとっても来年が良い一年となりますように。